コールドケース 第16話「ボランティア(Volunteers)」
米国放送日:2004年3月7日
監督:アリソン・アンダース
今回の監督アリソン・アンダースは大人気海外ドラマ「Sex And The City」では4話監督を務めています。コールドケースではこの「ボランティア」1本のみ。ビバリーヒルズ青春白書のクレア役キャスリーンとアリーマイラブのジャクソン・デューパー役のテイが主演をしている「MURDER IN THE FIRST/第1級殺人」では6話監督を務めています。
簡単なあらすじ
カルヴァンビル取り壊しのため、建物の基礎を掘り起こしていた作業員が2体の白骨を発見。
ビニールに包まれていたため衣類などはそのまま残っていた。女性の白骨はサマーオブラブのネックレスと服装からして年代は1960年代後半と特定。
誰が建物の基礎部分に遺体を埋めることができたのか、リリーたちは捜査に動き出す。
※時期により配信が終了してる場合があります。
今回の事件
1969年6月3日 白人女性と黒人男性の2人が失踪した事件
22歳のジュリア・ホフマンと23歳のジェラルド・ゲイリーが失踪した。
両親から捜索願が出されたが、ふたりは見つからず仕舞いだった。
当時関わっていた人物たち(※ネタバレ含みます)
ネタバレになるのでご注意ください。
アダム・クラーク
コミューン時代ジュリアの恋人だった男だが、基本的にフリーセックスを掲げているため他の女性とも関係を持っていた。
コミューンでのリーダー的存在で反戦活動などをしていた。
現在はライフコーチをしている。
テリー・マックス
ジュリアの友人。コミューンでは二人で皿洗い係をしていた。もともとお嬢様でコミューンには興味本位で入っただけ。
現在は画商をしている。
ドクターリンデン(ドクターL)
中絶サービスの組織「ジェイン」のドクター。
ルネ
妊娠してしまった高校生。彼女を送迎した後にジュリアとジェラルドが失踪している。
コレット・ファーガソン
ジュリアとジェラルドが失踪後、ジェインで連絡係をしていた。ジュリアとは怪しい中絶施設で出会い、その後ドクターLの元で一緒にボランティア活動をしていた。
現在はテンプル大学で政治学を教えてる。
ライオネル・ロイス
中絶=黒人虐殺という考えを持っている黒人解放戦線に所属。中絶ボランティアをしていたジェラルドをスパイと疑ったことも。
チャーリー・リンズラー
ルネの恋人だった男。当時17歳で一時期建設現場で働いていた。
現在は妻子持ち。
犯人&犯行
がっつりネタバレになります!!!
コミュニティのリーダーだったアダムが実はFBIの犬だった。
中絶支援をしているジュリアとジェラルドを隠し撮りし、情報をFBIに売っていたが、隠し撮りをしているところを二人に目撃されてしまう。
アダムをスパイだと確信したジェラルドとジュリアはアダムに詰め寄るが、
コミュニティのリーダーで皆から崇拝されていることに快感を覚えていたアダムは、この幸せな時を奪われたくなくて二人を射殺。
罪をチャーリーに着せるため、遺体は建設現場に埋める。
第16話「ボランティア(Volunteers)」のネタバレ感想
感想にはネタバレがありますのでご注意ください。
「中絶」という選択肢が 意外とないアメリカ
今回の事件は1969年。この時代は中絶の自由がほとんどの州にありませんでした。
そのため妊娠してしまった女性たちはジュリアたちのように怪しい医者の元に行くしかなかったようですね(医者かどうかも怪しい)
ドクターLみたいなお医者さんは実際にいたのでしょうかね。。
アメリカでは1820年代以降に中絶を禁止する州が現れ始め、1950年代にはほとんどの州で中絶禁止となります。(命に係わる場合は許可)
中絶だけでなく、婚姻関係のあるカップルは避妊具を使ってはいけないなんて決まりもあったようですね。
こちらは1965年にグリズウォルド対コネチカット州事件で違憲判決が下されています。
中絶に関しては1960年代に緩和していく州が出てきて、1970年には4つの州が中絶を許可していました。
他の州でもこの権利を勝ち取るためにジュリアのような人たちが頑張っていたようですね。
ロー対ウェイド事件
アメリカで決定的に中絶が許可される流れを作ったのが「ロー対ウェイド事件」です。
「妊娠を継続するか否かの決定は、プライバシー権に含まれる」として1973年にアメリカ合衆国最高裁が出した判決。
これによってアメリカでは中絶の自由が与えられました。
ドラマの事件は1969年。その4年後に勝ち取った権利。
この活動をしてくれたジュリアとジェラルドに感謝するかのようにラストシーンではリリーがふたりの写真を大事そうに持っていましたね。
ちなみに日本では1948年に制定された旧優生保護法(現在は母体保護法)により人工中絶は合法化されています。
(明治時代1907年にできた堕胎罪は今でもありますよ)
過去の問題じゃないアメリカの中絶禁止問題
中絶の自由を勝ち取ったのが1973年ですが、現代である2022年。
また中絶禁止の流れがアメリカに押し寄せています。
実際オハイオ州では、妊娠6週以降の中絶が原則禁止されることになりました。性的暴行による妊娠でも中絶はできません。
これによって性的暴行の被害に遭ってしまった10歳の女の子が隣の州で中絶したそうです。
妊娠6週目なんて本当に初期の初期だし、子供が被害に遭ってるのにそれでいいのか?と考えさせられる胸が痛い事件です。
2022年6月24日に、アメリカの連邦最高裁判所が「中絶は憲法で認められた女性の権利だ」とする「ロー対ウェイド事件」の判決を覆しました。
そのためまた中絶の可否はそれぞれの州に任せられることになったようです。
「憲法は中絶する権利を与えていない」っていうのが連邦最高裁判事たちの言い分のようです。。
この件に関してはハリウッドセレブたちがこぞって中絶禁止反対の意思を掲げていました。
実際自分が中絶したことでどれだけ救われたのか語るセレブも現れたほどです。
これからのアメリカでの中絶問題はどうなってしまうのでしょうか。。
また歴史は繰り返されるのか・・・。コールドケースで改めて考えさせられました。
スコッティの彼女エリッサ登場
今回の話があまりに歴史と現代の勉強をしないとついていけない話だったので、中絶問題に関する話が長くなってしまいましたが、
今回スコッティの彼女が登場しましたね~!
変に明るくて人懐っこい?感じだけど瞳孔が開いてるような。。なんだか心配になってしまう感じの彼女でした。
リリーも「変わった子だよね」と言ってしまうほどだったので、刑事としての勘で色々感じているところでしょう。
でも変に詮索しないのが大人だな~って思います。リリーもプライベートは色々あるからね。
しかし相棒がリリーちゃんだったらそりゃ心配になるよね!あまりに美人だもの!
1969年
今回の被害者であるジュリアも活動していた「サマー・オブ・ラブ」は1967年夏にアメリカ合衆国を中心に巻き起こった、文化的、政治的な主張を伴う社会現象。
ヒッピーが集ってフリーセックスやドラッグの自由、戦争反対を訴えていた活動ですね。
しかし平和を訴えるサマー・オブ・ラブですが、この年は皮肉なことに黒人差別が史上最悪だったとか・・・。
ライオネルがサマー・オブ・ラブのことを「あまちゃんたち」と言っていたのもそのためでしょうね。。
実際安全なところで反戦を訴えてる姿を見て、暴行を実際に受けてる黒人からしたら失笑したくなるのでしょう。
この活動は1967年の夏だけかと思われてましたが、翌年もやっていたそうなので、この事件が起こった設定である1969年は実際どういう感じだったのでしょう。
この活動に居場所を感じていたアダムのように、ヒッピー活動にしがみついていた人もいたかもしれませんね。
ジュリアのファッションはヒッピースタイル。
彼女が履いていたパンツはパンタロンスタイルと呼ばれる形のもの。ここ日本でも1969年には大流行していました。
1969年に公開された映画
「イージーライダー」
「勇気ある追跡」
アカデミー賞受賞作品「真夜中のカーボーイ」
ゲスト出演者
ジュリア・ホフマン役 アンバー・ベンソン
今回、被害者のひとり、ジュリア・ホフマンを演じたのは、アンバー・ベンソン。
1977年1月8日アメリカ合衆国アラバマ州出身。
日本でも大人気だった「バフィー 〜恋する十字架〜」ではタラ役で出演。
どこかで見たことがあると思ったら!!ドラマ自体は見れる環境じゃなかったので未視聴ですが、宣材写真で見たことがある!
日本でも人気な「スーパーナチュラル」などにも出演。
ルネ役 マギー・グレイス
今回妊娠してしまった女子高生を演じたのは、マギー・グレイス
1983年9月21日アメリカ合衆国オハイオ州出身。
2004年の大人気ドラマ「LOST」のシャノン役です!
彼女も00年代に様々なドラマに出演していたので顔を覚えてしまった方も多いのでは?
LOSTの大ブレイクにより、2005年のマキシム誌では「ホットな100人」の27位に選ばれたことも。
「CSI:マイアミ」「ザ・フォロウィング」などにも出演。
映画界にも進出していて「きみがくれた物語」やリーアム・ニーソンの「96時間シリーズ」などにも出演。
大人気ドラマ「ウォーキングデッド」のスピンオフ作品「フィアー・ザ・ウォーキング・デッド」にも出演しています!
海外ドラマファンなら絶対に見たことがある女優さんですね。
今後も出演作は決まっているので人気女優の地位を確立しているようです。
挿入歌
オープニング、ジュリアとジェラルドがルネを車に乗せるシーン
Volunteers
by ジェファーソン・エアプレイン
「俺たちはアメリカのボランティアだ」という歌。オープニングからぴったりです。
アダムがステージでスピーチしてるシーン
Somebody to Love
ルネをドクターLの元へ連れていくシーン
Mercy Mercy Me (The Ecology)
by マーヴィン・ゲイ
コレットとジュリアが初めて出会ったシーン
A Whiter Shade of Pale
by Procol Harum
ルネが妊娠したことをチャーリーに伝えるシーン
Love Is All Around
by The Troggs
アダムとテリーがベッドにいるシーン
White Rabbit
by ジェファーソン・エアプレイン
アダムがふたりを撃ち殺すシーン
I Shall Be Released
by ジョー・コッカー
ラストシーン使用曲
ヤングブラッズ – Get Together
今回のラストシーンの曲はヤングブラッズの「
もともとは1967年にリリースしたデビューアルバムに収録されていた楽曲ですが、1969年にビルボードホット40で5位を記録。平和と仲間への愛について歌って曲で、今回のラストシーンにはぴったりの歌となっております。
なぜ1969年にいきなり5位を記録したのかというと、ユダヤ・キリスト教系公益法人のNCCJとICCJのCM曲に起用されたからだそうで、時代も時代なので平和についての歌が売れたのかもしれませんね。
コールドケースエンディング曲をまとめたプレイリストをAmazon Musicに作りました。
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今回の一言
コールドケース放送から約18年後にまた中絶問題が出てくるとは…。ドラマ放送当時は思ってもみなかったでしょうね。
次の回、第17話「脅迫電話(The Lost Soul of Herman Lester)」の感想はこちら
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